さて、小倉
センセさんからお返事いただいたのを読みました。
で、感想ですが・・・・・・・・びみょーだな、と
ちょっとの違いだったらそのまま放置しておいても良かったのですが、どうも根本的になんかアレな感じで、このまま同属扱い受けるのもイヤだな、と思うのでいちお書き記しておきます。(めんどうなので今回はTB送りません。これ以上のinformationもinsightも期待できそうにないし)
あまりないとは思いますが、このエントリだけバラで出回ってもイヤなので、この前提となるエントリも貼っておきます。(今回のエントリは以下からの続きです)
市民社会と制度について(ジャーナリズム論承前)
http://muse-a-muse.seesaa.net/article/35911907.html んじゃ、思考モードに入るので文体変えます(たぶん)
--
まず前提として、ぼくがした質問を箇条しておく。それに対する小倉さんの返答はどうだったかという形で見ていこう。主要な論点としては、「ネット上の発言のトレーサビリティ(追跡可能性)を確保できるかどうか」、ということ。
(1)固定ハンドル(以下、コテハンと略記)で何年か個人サイトを運営している人はそれ自体が財産となり、手放し難いのでそこから追跡可能性を担保できるのではないか?
(2)実名という権威を借りて虚偽発言があるように思うがそれについてはどう思うか?
(3)匿名であればこそ内部告発ができるのではないか?
んで、以下はそれぞれの質問に対する答えとかいろいろ
(1)固定ハンドル(以下、コテハンと略記)で何年か個人サイトを運営している人はそれ自体が財産となり、手放し難いのでそこから追跡可能性を担保できるのではないか?オグ:<コテハンと言ってもハンドルなんかいくつも作れるから責任がバラける>
(「固定ハンドル」はいつでも、いくつでも作ることができるので多重人格を演じやすいし、その固定ハンドルを利用して社会生活を送っていない以上、その固定ハンドルが如何に悪名をとどろかせることになろうとも自分の社会生活に何らの悪影響も受けない)
・・これってどうでしょうね?
そういうのはぼくが想定したコテハンとは少し違うんですが・・。たとえば
finalventさんなんかは動かないし・・。
反論としては「誰でもそのコテハンを騙れる」、のほうが妥当だったのではないでしょうか?(それでも反論にはならないんだけど)
ってか、ギロンの前提として、
前のエントリでも言ったように、 「言説の通時的な妥当性によって信頼性を測る」ということなんですが・・?
つまり、社会的ステータスがはっきりしなければしないほど言説そのものの説得力からその妥当性を測れると思うんです。背後の権威とかいうものとかは捨象して。んで、そういったコテハンの言説をずっと見ていれば、その人の文体(思考様式)というものが分かるようになるし、第一スキーマが違うので分かると思うんですね((C)finalvent)。その人と違う人がコテハンを騙ってもばれちゃう。って言っても、読み手のリテラシーに依るのでしょうけど。
んで、まぁ、finalventさんとかの場合はココログの有料会員なのでクレジット情報からトレーサビリティは担保できるんですね。つまり、半匿名という状態なんです。これはケータイからSNSに登録させることで追跡可能性を担保するということとも通じると思います。
そういうわけで技術とお金的に半匿名におけるトレーサビリティは担保できるようになってきてるんですね。
この辺について具体例を挙げなかったのはルール違反っぽいですが、小倉さんなら知ってるかと思って・・。
(ご存知なかったのかな。こちらの書き方が悪かったのだろうか・・・リテラシーとかもあるかもしれないけど)
あと、もうひとつ、『特定の人や集団を罵ることしかしていない固定ハンドルなんて』、と仰ってますが、これはやはり音羽さんのことが頭に浮かびますね。(
参照)
例えばこの辺りに詳しいですが、
オーマイニュース編集部に行ってきました。(上)(@Parsleyの「添え物は添え物らしく」)
http://yaplog.jp/parsleymood/archive/481オーマイニュース編集部に行ってきました。(下)(@Parsleyの「添え物は添え物らしく」)
http://yaplog.jp/parsleymood/archive/482 彼は実名をオーマイニュースで公表してはいるが、gerlingというコテハンで人のことを罵ってますね?小倉さん流に言わせれば、「コテハン(≠匿名)の魔力がそうさせたのだよ」、ということかもしれませんが、では、「実名をさらしているからおーまいにうすでは
ねこかぶってる丁寧な口調で話している」、ということなのでしょうか?「単に編集が入るので、相手をあしざまに言えない」、というだけではありませんか?つまり、音羽氏の内部規律によるものではない。
ここで勘違いして欲しくないのですが、例の募金の問題とこれは別問題ですから。例の募金自体は別のレイヤーで検証してもらうとして(心情的には募金があったほうがよいように思います)、「匿名 / 実名」ということについて言えば、音羽氏はどこかに実名のトレーサビリティを預けているからといって内部規律が高まっているわけではない、と思うのです。
反対に、たとえばおーまいにうすが半匿名の形(つまり、実名登録が必要だけど、記事の署名表記的にはハンドルが許される)とした場合でも彼は
ねこかぶった丁寧な文体の記事を書くように思います。編集で切られるのは嫌でしょうから。
っていうか、「音羽」という名前がペンネームなのかもしれませんが、やはり同じことです。(その場合、半匿名でもトレーサビリティは担保できる、ということになります)
ただ、小倉さんが想定しているのは「1対多」的な状況(サイバーカスケード)における匿名の暴力ということなのかもしれません。
その場合でも同様で、システム的に半匿名状態は可能だと思うのですが・・?(現在は実装されていないにしても、簡単にできるはずです)
IPからトレーサビリティを確保できると思うし、実際2chはそんな感じで警察に協力してますね?(それにし対しては、「ネットカフェからアクセスすることによってIPバラバラ」というのもありますね。それだったら実名を偽るということもあるしなぁ・・。)
ってか、こういう問題って「技術+市場」的なものなので解決できる点が多いように思うんです。なので、焦って「実名」ってしなくてもいいと思うんだけど・・。
で、次
(2)実名という権威を借りて虚偽発言があるように思うがそれについてはどう思うか? ここはスルーされました。具体例があがってながったのが問題なのかもしれませんが、例えば昨今の
ニセ科学的問題とか、直近だと
「世界一受けたい授業」の問題があります。
後者はすぐに効果が現れるものではないし、これ自体では「ウソ」とは言い切れない(反証可能性に乏しい)と思うんですが、やっぱ間違ってると思うんです。(「思う」っていうか間違ってますね)
んで、怖いのは、すぐに効果を検証できるものではないので、視聴者の根っこの部分に染み込んでいく危険性がある、ということです。なんとなく「あ、格差ってないんだぁ〜(へぇぇ)」、って感じになってその後、特に検証もせず過ごして行く・・。特に子供への影響が心配ですね。将来のことを考えるとこういうのは社会的に重要な問題だと思います。その意味ではTV局の道義的責任は重大。
また、なにか問題が生じて検証を始めるにしてもそのときには思想面での影響がしみこんでいる危険性がある。検証には時間がかかるので、視聴者はその結果まで興味を持続しない。で、「格差ってないよねぇ?(だって、らくしてごひゃくまんえんかせいでるもん!)」、とかいった
脳みそ使ってないのか的よくわからない印象が残っていく。
繰り返しになりますが、その責任は重大だと思います。
んで、そういうのに「専門家の権威(=名前)」が都合よく編集されて使われていく。編集された時点で専門家の意見ではなく、その番組(記事)を作った編集者の意見なのですが視聴者はそのことに気づきません。そして、上記したように、印象のみが残っていく。
「実名」ってほんとにいいですね(すはらしい)
(3)匿名であればこそ内部告発ができるのではないか? これについては「真摯な内部告発」というお答えが返ってきました。
なにを持って「真摯」とするのかよくわからないのですが、文脈的には「経営上重要な」ということでしょうか?とりあえずそう解釈して話を進めますと、経営上重要なことに関わると思われるような事態に対する内部告発では『情報源が限られるので、匿名でなされても企業として情報源をある程度特定できる場合が少なくないので、その場合は秘密裡に報復をすることが可能になってしまいます』、と。
これはいちお納得です。
でも、ちょっと疑問なのは、たとえばジャーナリズムの現場では情報源の秘匿というのは通例ですし、ウォーターゲート事件のディープスロートを見ても分かるように匿名でも重要な情報は出せますよね?で、その後、ネタ元の安全は確保される・・。こういうのは例外なんでしょうか?
そして、「どれが真摯な内部告発か分からないで調べるのが大変」、とのことなんですが、これにしてもジャーナリズムでは複数の証言からウラをとるというのは普通にやっていることだと思いますし、そういう意味では匿名であっても情報の真偽は確かめられるはずです。ただ、小倉さんが言いたいのは、「そういうことをやっている時間(人員)が足りない」、ということなのかもしれませんが、やはり堂々めぐりでジャーナリズムの現場ではそういう風にやっているわけですし、やってやれないということはないはず。人員が問題ということなら増やせばいいはずですし、ジャーナリズム機関のようにアウトプットする手間を省いて情報の検証のみに特化した機関を作れば、作業処理時間は短くて済むはずです。(金銭的問題は置きますが)
そういうわけでやっぱりよくわかりません
ってか、小倉さんは現行の制度での援用を話しているのであって、「できてない機構(実現可能な機構)」、については想定していないのかもしれない。
でも、技術的に可能なところまできてるのになぁ・・。
こういうのはやはり「理念と制度」っていうか「技術・お金(市場)と制度」ということで池田センセも絡むと思うんだけど、 いつも「制度によって規制するのではなく市場と技術を優先させるべき」といっておられる池田センセがこの問題に関しては制度による封じ込めを主張されているように思われるのはやはり不思議。
そういえば小倉さんも知財関連だとリベラルな発言されてるのに(
参照)。
なんでかな?問題の緊急性が違うとかかな?
リベラル固定とかそういう問題ではない、ということかな?
てか、やっぱお2人とも2chとかでさらされた挙句、アクセス集中したりいろいろ書かれたりしてひどい目に合わされたことがトラウマになってるのかな・・?
それはそれでご愁傷様というか大変だなぁという感じだけど、その怨念が「実名 / 匿名」問題に絡んでるのだとしたらやめてほしいと思います。
あ、あと「制度と自由」関連で。毎日新聞でネット社会に対してみょうなキャンペーン張ってるみたいだけど(
参照)、これってどうなんだろうと思う。
というのも、言ってきたように、ジャーナリズムというのは権威ではなく言説の妥当性によって評価されるべきだと思うんだけど、そうであるべきジャーナリズム(?)からただ「匿名」というだけでネット社会を貶めるような言説が出てきているというのはどういうことなのかな、と思って。
この人たちは言説の妥当性(あるいは情報の信頼性)についてどのような考えを持っているのだろうか?
そして、そういった大手マスコミとかそれに連なる人々はなにか問題が起こると「言論の自由が弾圧されるー!」とか騒ぐんだけど、それってあなたがたの既得権益が弾圧されるだけであって、たとえばフリーランスのジャーナリストたちがひどい目にあってても無視してる現状ってよくあるよね?
・・なんかよくわからん
--
関連:
情報社会の倫理と設計についての学際的研究(@GLOCOM)
http://www.glocom.jp/ised/※もう一回見てみようかなぁ・・。
情報ネットワーク法学会
http://in-law.jp/※最近見てないなぁ・・。
ってか、ニフティサーブだかなんだかのコテハン論でも見たほうがよほど有益なのかもしれない
--
追記(2007/3/15):
isedの小倉さんの講演を読んでみました。
表現の匿名性を完全に保障することの問題点
http://ised-glocom.g.hatena.ne.jp/ised/12021210やはり、匿名性のトレーサビリティ関連でIPの話題が出てて、「それプロキシかませばごまかせるよ?」、的なところからIP却下。「ユーザーにIDを割り当てればいい」というすごい飛躍が・・。
率直に言って、なぜ小倉さんがひどい目にあったからといって我々までID登録しないといけないのか・・?(それってOpen SNSじゃん。vox?)
まぁ、「匿名サイバーカスケードによる暴力」ということで公共的なギロンにしてるんだろうけど、どうしてもびみょー。
ってか、ふつーに考えてディフェンス面を強化すればいいのであって、それだったらシステム・スルー力のほうがいいかな、と。(
参照、
参照2)。
ってか、これもOpen SNSっぽくてなんかイヤなんですが、アクセス持ってる人とか名前の売れてる人は仕方ないのか、とも思います。
でも、これってモロに「代表的具現の公共性」(ハーバーマス)なんですよねぇ・・・・。(ためいき)
ってか、小倉さんの場合はもうちょっとレスポンスゆるくしたほうがいいように思います。怒るからいじりたくなるんじゃないでしょうか?(短気なぼくが言うのもなんですが)あと、「権威をひっぺがして、同等になりたい(フラッグをとりたい)」、というのはあるでしょうね。だったらとらせてやるのも大人、かと・・。