2008年04月04日

Life「自分探し」外伝から:雇用の流動性の必要性とそれをめぐる環境について

 だいぶ遅れたけど文化系トークラジオlifeの「自分探し」の回の外伝2が労働環境のボトルネック問題と繋がっておもろかったのでメモ。

文化系トークラジオ Life: 2008/03/09 「自分探し」 アーカイブ


アウトラインとしてはこちらにもまとめてあるんだけど


「自分探し」 - 雑種路線でいこう


 「自分探しに失敗人たちへのセイフティネット作りを考える必要があるんじゃないか?あるいは自分探しを早いうちにあきらめられるように説いてくれるような場の設定」とか「もともと不満が生じやすいような労働環境があったから自分探しに向かうようになったのではないか?」って感じだったように思う。全体的には、「自分探しというものが日本社会のある世代にとっての構造的問題であり道楽とかそういうのじゃないんだよ」、って話。この辺は速水さんの本のラインに沿って進んでいた。


muse-A-muse 2nd: 速水健朗、2008、「自分探しが止まらない」


 で、外伝ではそういった事態が生じる構造的な理由についてもそっと詳しく話されてた。一言で言うと「労働市場に流動性がない」ってことになる。前提として、キャリアアップに繋がるキャリアラダーが見えないので不満がたまってきて転職、離職(あるいはそこから自分探し)したりするみたいなんだけど、その際身につけたスキルに応じて新しい場に行けるような環境が整ってない、と。アメリカなんかだとユニオンがあって雇用者同士の横のネットワークがあり、そういうのを元として新しい職場に出会える機会が生まれるけどそういうのもないし…

 個人的にはcraigslistみたいな感じでサクサクっと適材適所出来ちゃえばいいと思うんだけど日本にはそういうのがない。「オンラインで買い物するような感じで雇用者と被雇用者がつながっていくといいねー」みたいなことはことりこもゆっとったな。


 んで「雇用環境の流動性がないねぇ」って話繋がりで日本的な流動性のなさの具体例として新卒一括採用が挙げられていた。「これがあるので中途採用に障壁ができるのだろう」、と。日本社会における新卒神話、「スキルよりも新卒を!」みたいなのって非合理的でたしかに問題なように思うんだけど外伝2のおもしろさはここから始まる。「そういった採用障壁がなぜ生じているのか?」ということについての構造的な概説みたいなの。(※確定的事実ではなく「〜ではないだろうか?」って保留はあるだろうけど)

 柳瀬さん的には「役所の問題だ」って一刀両断してはった。「雇用の参入障壁の代表例みたいなのが役所。生産性関係ない非合理的な仕事で人材を飼い殺しにしてるのも役所だし……んで、くだらない仕事ばっかさせられるから不正するようになる」、と。

 「頭脳を青田買いして飼い殺す(ほかに渡さないようにして仮想的の戦力をそぎ、相対的優位を保つ)」って考え方は大企業の採用基準にも合ったな。まぁ、余裕があるところがやるようなことなんだろうけどそれによって人材のボトルネックが生じているってのはあると思う。そういうのは結果的に社会全体の生産性をそぐことになってるのだけど自分の会社さえよければいいってエゴがあるわけだから仕方ないないのだろう。囚人のジレンマっていうか…。つか、大部分の会社は慣例にしたがって新卒-学歴(あるいはSPI優等生)採用してるだけなのだろうけど

 こんな感じで日本ではつぶしあい戦略だか慣習だかに従って雇用における非合理的判断がされている(ことがままある)ようなんだけどアメリカの場合はどうか?GoogleみたいなITベンチャーにその国のもっとも優れた頭脳が集まり成果をあげ生産性を高めていく環境があるのは雇用の流動性に関するインフラが違うのではないか?

 この辺の問題意識は梅田さんにも共通するみたい。具体的に言うとIT起業に出資するエンジェルの存在とかベンチャー立ち上げるときの手続き的な問題。日本の場合特に後者が煩雑らしくてITを始め学術系でも辟易してる人がけっこういるみたい。


京大の山中伸弥教授かっこよす - おこじょの日記

2007-11-21科学・技術は日本の生命線…のはずだけど - 赤の女王とお茶を


 
 梅田さんもその辺に辟易して言論活動を行なってる(のではないか)とか


 IT業界の問題についてもそっと言うと日本も含めた東アジアの場合、IT業界の人材って言うのは不景気→就職氷河期に行くところがなくてIT業界に流れた人材が中心となってるみたいなんだけどそういう人たちが中心なので劣悪な雇用環境というのがデフォってことになってしまったみたい。こういうのは日本のアニメ制作現場の労働環境にも通じる。

 ただ、日本と東アジア、具体的には韓国などのIT企業との違いは後者の場合は「劣悪な環境からはじめても世界に通じるネットゲーを作れる」みたいな夢が見られることだけど日本の場合にはそういった人材が影響力をもてない、というところにあるらしい。この辺はitkzもなんかゆっとったな

amachang(天野)のような人間から殺される - ぼく最速戦記君劇場@自宅の日記 Not Found - 技術日記



 で、どうするか?


 「やっぱ競争じゃん?(適正な競争をさせて国際競争力高めていくしかないじゃん?)」って話になるわけだけど、この辺でまた既得権益な話が絡んでくる。リソースが潤沢にあって競争するべき時期に競争をサボった人々(具体的にはインフラ屋 ex.NTT)がボトルネックなんじゃね?ってことに


 これに対しては鈴木さんが、「たしかに競争サボったのはアレげだったけど競争環境が整ってないうちに競争しても潰れてただけだっただろうからある程度バッファの期間ってのは必要だった。でも、日本の場合はそのバッファの期間をなにもせずに食いつぶしちゃったわけだけど」、ってゆってはった。

 具体的になにをすればよかったか?

 「競争に立ち向かえるだけの人材を育てるために教育環境を整えればよかったってことなんだけどそういったグランドデザイン(全体最適)のようなものもなく、たとえば産業分野なら産業分野だけの最適化に走ったがために失敗してしまったのだろう」、と


 教育のボトルネックについては以前にエントリしたように「各学校に編成の自由が与えられていない」(文科省が関与しすぎ)ってことでここでも行政がボトルネックって話で繋がってくる。宮台さんが(若い官僚が活きるように)行政から変える必要がある、みたいなこといってるのもこの辺りの話なのだろう。



 いちお「自分探し - 雇用のセイフティネット」の問題に戻ると、こんな感じで競争環境整ってないうちに社会に放り出された層が労働環境に不満を持ったからって「自己責任」とか言われてもなぁ、ってのはあるだろう。もっとも環境やら他人のせいにして依存するって問題もあるので「どこからが自己責任か」みたいなことも気にしたほうが良いのだろうけど。



 今回は番組内容のメモって感じだけどこれ系の話で個人的な課題としては「雇用の流動性」とか「ユニオンの可能性」、ちょっと拡げてボトルネック独占とエゴの関係から公共性うんぬんのギロンの再確認とかかな。ちょうどこんな本も出たみたいだし


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↑の感想みたいなの

ツイッターダイジェスト - 公共性論・経済学


 あと、この話で梅田さんの本に興味持ったので見てみようかな




posted by m_um_u at 10:17 | Comment(0) | TrackBack(1) | 社会このエントリーを含むはてなブックマーク
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