2007年10月20日

「ネットはカスケードを超える」・・のか?

けっこうめんどくさい問題(かつ専門領域)なのでスルーしようかと思ってたんだけどtwitterで書いちゃったのでいちお補足的に。
きっかけはこの辺


切込隊長BLOG(ブログ): 日本社会はフルボッコ先を求めている

切込隊長BLOG(ブログ): 続・日本社会はフルボッコ先を求めている


それについての感想ログはtumblrにまとめときました。(他人様の関連感想も合わせて)


むーたん:Twitter / m_um_u:ユーザーは自由から逃走する?(メディア利用における意思決定の従属化に関して) (仮)

むーたん:Twitter:フルボッコ先を求める日本社会とマスメディアの影響力(ネットはリテラシーを強化するのか?) (仮)


順を追って説明すると、まず最初に切込隊長のとこで、「最近、のマスコミを中心としたフルボッコ衝動はどうなの?」、ってエントリが上がったんですね。ポイントとしてはこの辺だけど


一番大事だった安倍首相の政権放り投げ→テロ特措法延長問題とか完全に国民の目から逸らされて、国民生活の改善には何ら寄与しない亀田一家叩きとかに国民総出で熱中するというのもなんか凄いな。本当に叩くなら、公共の電波に現役の暴力団幹部の皆さんがバッチリ映ってたときにやらないと。


 情報を消費する対象としての悪役、ヒールなんだとするならば、何か問題が起きるたびに不信感をうまく湧き起こさせて、結局誰が悪いのか決め打ちしてくプロセスが働きすぎてる気がする。柏崎原発のときの東京電力がいかにマスコミ攻勢に晒されて無用な原発批判を呼び起こしてしまったかとかの特集が組まれるほどに。



 もそっと詳しく勝手に内容を読み取るマンして言うと、内容について詳しく吟味されることなくその時点で沸き起こっていた"叩きたい”という欲動にしたがって叩く構図ができあがっている。んで、結果として重要案件からは目をそらされることになる、ということ。でも、それが与党や一部の権力者による誘導とするのは陰謀論すぎるでしょうね(隊長はそこまで言ってないけど陰謀論系の人はそういう路線で思考を組み立てたがる)

 ぼくのその後の感想、批判理論@(アドルノ+ホルクハイマー辺り)、もしくは批判理論A(ハーバーマス辺り)の影響を受けたメディアリテラシー第一期の流れがこういう路線をとることはよくあるなぁ、と。彼らの思考様式というのは、「これは権力をもったビッグブラザーによる陰謀だ!」って感じなんだけど社会人してる人なら分かるだろうけど世の中そんなに単純なものでもないからなぁ。。ここで言う「陰謀」ってのがもしあった場合、誰かの依頼を受けて世論誘導しているマスコミ(マスメディアに勤める人、あるいはその活動)も敵ってことになるんだろうけど、よしんばなんらかの誘導的報道になることがあったとしてもそれは彼らの能力や技術、知識が未熟であり業務内容に怠慢があるため結果として未熟な成果物を出しているに過ぎない。ステロタイプ的な話に乗ったほうがコンテンツ作りやすいので、「大衆が求めるもの」を作ってるに過ぎない、ってやつ。

 んで次のエントリについて。こっちはちょっと長いので要約だけで済ますと、alternative mediaとして期待されたネットの自浄作用が機能せず、opinion leader的な一部のハブの言説が無批判に信じられている情況がある、と。んで、そんな感じで積み上がっていった既成概念やストレスがある時点で決壊する。(それがサイバーカスケード) ・・サンスティーンかな


サイバーカスケード - Wikipedia

インターネットには、同じ考えや感想を持つ者同士を結びつけることをきわめて簡易にする特徴がある。つまり人々は、インターネット上の記事や掲示板等を通じて、特定のニュースや論点に関する考えや、特定の人物・作品等に関する反発や賛美等の感想を同じくする者を発見することができるようになる。加えて、インターネットは不特定多数の人々が同時的にコミュニケートすることを可能にする媒体でもあるので、きわめて短期間かつ大規模に、同様の意見・感想を持つ者同士が結びつけられることになる。その一方で、同種の人々ばかり集結する場所においては、異質な者を排除する傾向を持ちやすく、それぞれの場所は排他的な傾向を持つようになる。

そうした環境の下では、議論はしばしばもともとの主義主張から極端に純化・先鋭化した方向に流れ、偏向した方向に意見が集約される。そして、斯様な場所では、自分たちと反対側の立場を無視・排除する傾向が強化され、極端な意見が幅を効かせるようになりやすい。そして、小さな流れも集まれば石橋をも押し流す暴流となる道理で、ささやかな悪意や偏向の集結がえてして看過し得ぬ事態を招来してしまうことになってしまう。こうしてインターネットは、極端化し閉鎖化してしまったグループ(「エンクレーブ enclave(「飛び地」の意)」と呼ばれる)が無数に散らばり、相互に不干渉あるいは誹謗中傷を繰り返す、きわめて流動的で不安定な状態となってしまう可能性がある。サイバーカスケードとは、こうした一連の現象に与えられた比喩的な呼称である。


 要約すれば、massなものを避けタコツボ的にpersonalized mediaの使用だけに頼るようになることによって偏狭な精神・認知が涵養されていく、ってこと。こうやってまとめると従来の効果論にある涵養理論の亜流ともいえる。

 んで、まぁ、この辺の感想をもったわけだけど


むーたん:Twitter / m_um_u:ユーザーは自由から逃走する?(メディア利用における意思決定の従属化に関して) (仮)

むーたん:Twitter:フルボッコ先を求める日本社会とマスメディアの影響力(ネットはリテラシーを強化するのか?) (仮)


 この辺けっこうむずいのでおーざっぱに言っちゃうけど、最初の感想はマスコミュニケーションの(蓋然的)送り手も受け手も議題設定に巻き込まれてるね、って話。議題設定仮説についてはあとで説明リンクしとくけどおーざっぱに言えば「議題の回答については個々人の選択の余地があっても、その議題に関心をもってしまっている時点でなんらかの影響を受けてる(認識を囚われてる(hacked))」って話。マスコミも視聴者も亀田事件の是非についてはいろいろな意見があるだろうけど、その話題に関心をもってしまってる時点で囚われだね、と。

 んで、次の感想的には隊長のエントリの「ネットの情報ってそれほどリテラシーに寄与してないね(内田センセの専門領域じゃない話とか信じてる人いるし)」な話を受けて、情報(コミュニケーション)の二段階効果説的に、人は「正しい情報」ってよりもオピニオンリーダーの言うことの影響を受けやすいからなぁ、ってのを思い出した。クチコミなんか思い浮かべてもらえば分かるだろうけど、情報処理能力や情報へのアクセスが低い人というのはけっきょく身近な人の意見を聞いて納得するのよね。それは商品の購入においてもそうだし投票などの政治的選択にしてもそう。つか、情報の処理能力うんぬんに関わらずわれわれにはそういう傾向がある。そのほうが情報処理速くなるしね。特に現在のようにたくさんの情報に囲まれていたらひとつひとつの情報を精査してる暇なんかないもの。それはそれで仕方ないことなのかなぁ、とも思う。

 でも、それって認識を他人に預けてるってことでけっこうキケンなことなんだけど‥まぁ、「実生活でキケンのない範囲の判断を預けてるだけ」ってことなんだろうなぁ。それでそういう領域の情報については文脈も確かめずにフルボッコ(消費)する、と。

 で、その後のお話の流れ的には、「リテラシーの低い層と高い層で違いがあるのではないか?」とか「最近は文脈読まないで"正しさ”フルボッコする人たちが増えてるね」って話が出てきた。

 前者についてはS.ホールの「encoding / decoding」モデルを借りて階層分け、その際に選択されるコードやメディアの種類を分け分析することが可能ではないかと思う。その際、ハブ的な影響力を持つ人なんかはひとつのメディア的影響力を持つだろうなぁ、とかちょっと思う。

 後者についてはむずいな。これはマスコミュニケーション論の話ではなく社会学系の話になるので。従来のマスコミュニケーション論なら、<そういう「正しさによるいぢめ」傾向が生まれたのもマスメディアの扇動の影響だ!>、みたいな論調になるかもしれないけど、メディアの影響ってのは社会的に見ればそんなに大きなものではないからな。つか、inputのひとつであることには間違いないんだけど、メディアがすべてを決めてるみたいな決定論に陥るのはまずいように思う。

 すげーおーざっぱな印象だけどこのような現象に対する分析視角としての有効性はマスコミュニケーション論(3〜4割)、社会学その他(6割)って感じじゃないか? 後者には日本独特な「空気」問題も絡むだろうしな。


・・そういうわけでこういう問題は複雑なんすよ。一部の人からは「簡単に説明しなきゃバカぁ」とか言われるんだろうけどね







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関連:
マス・メディアの影響

※マスコミュニケーション効果研究における代表的な理論(仮説)の紹介。わかりやすくまとまっている


「バックラッシュ」についてマスコミ学会で喋ったこと。 - 荻上式BLOG

※チキどんはその辺のカスケード問題に対してネットリテラシー(+ コミュニケーション)の向上の可能性を見てるみたいだけど....むずいよなぁ。。(つってもコミュニケーション系の方向性としてはそれが妥当なんだろうけど)



posted by m_um_u at 10:18 | Comment(0) | TrackBack(0) | メディアこのエントリーを含むはてなブックマーク
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