2014年09月25日

女のいない男たち



「奥さんはその人に、心なんて惹かれていなかったんじゃないですか」とみさきはとても簡潔に言った。

「だから寝たんです」



「女の人にはそういうところがあるんです」








女のいない男たち -
女のいない男たち -


「木野を読んだかっぱさんの感想が聞きたい」といわれたので「木野」から読み始めて、その時点での感想としては「小説の最初の方はリアルだけどあとはシュール-マジックリアリズムで、後半の不思議体験は女に逃げられた男がそのショックから回復できないためにつくりだした防衛機制的な逃避妄想なのではないか?そしてその不思議さ、結論のない不気味さはつげ義春的なものを想わせる」というものだった。

すくなくともこの作品単独だとその印象は変わらない。しかし全体を通して読んだ現在、そしてこちらの解説を通してある程度の補助線をもらったいまとしてはちょっと違う。「木野」は単独で読む作品ではなく他の作品群との関係、すくなくとも「ドライブ・マイ・カー」→「独立器官」との関係においてああいった形をとったものだったのだな。



村上春樹の読み方『女のいない男たち』前編|新しい「古典」を読む|finalvent|cakes(ケイクス)
https://cakes.mu/posts/5661


村上春樹の読み方『女のいない男たち』後編|新しい「古典」を読む|finalvent|cakes(ケイクス)
https://cakes.mu/posts/5716



あるいは村上春樹自身が最初に解説していたようにコンセプト・アルバムのなかの作品の一つ。



コンセプトは「女の(が)いない男」ということで、それは実際に女に去られてしまった、あるいは、女と付き合っていつつも精神的なところでは女に去られている(互いに理解していない/裏切られている)男たちということのようにおもった。男たちだけというよりはその対称として女たちも。

ただ、女の場合は女独特の感覚のようなものがあるようで、それはこの作品では独立器官と呼ばれていた。

自分は男性/女性というはっきりと区分けには懐疑的で、男性/女性として現れていて特にセクマイ的な指向がない人たちでもそれぞれが異性的な部分を持っていて、その割合は個人ごと、事象ごとに異なると思っているので「女独特の」という言い方はナンセンスなように思うんだけど、でも、女性と付き合っているとそういうものは想像してしまう。「この人たちのこの辺りの突然の心変わり/それを気にしない様子はやはり女性として独特のものなのだろうか?」的なの。


端的には「女は子宮で考える」とかいうあれだけど、あれだと性欲に引きづられる的なニュアンスが強いのでまたちょっと違うかな。性欲的なものもすこしは絡むのかもだけど。



ああ、そう、「性欲」。この短篇集ってここがまず前提/暗黙としてあって、それが枯れたりある程度落ち着いた地点からの男女の内面語りになっているように思う。「男女」ていうかもっぱら男性視点で女性はいないわけだけど、とりあえず中年に差し掛かった時にもたげる「セックスとか付き合いとかもある程度足りてるんだけど、、なんかなあ」的な感覚なところで、なんとなく言語化しづらかったところを男性側からの語り先行で表してる。

そういった語りというのはたぶん世間的には「女々しい」「男のくせに」とされるようなところで、それを内面化して男性自身もふだんの生活の中でスルーしてしまってるようなそういうところ。

男性学、、のもそっと文学的内面語りというか…。


そんでこのへんは女性の方の語りとしてはそれなりにあったように思うんだけど男性側のはなかった。あるいは見つけにくかった。

そこには「男として」「女として」的な役割分担も絡むのかなあ的な感じ。

男が「女とは…」とか語る場合、どうしても金持ってるおっさんが高そうな酒で−y( ´Д`)。oO○しながらうんちくダンディズムって感じだから。


そういうのでもなく、衣食住足りるぐらいの感じでわりとふつーに生活してきた男性が人生落ち着いちゃって中年枯れしてきたところで「( ^ω^)そういや、女・・・なあ。。」とか思うような。


女としてここに代表されるものは「人生の目的」といってもいいのかも。ある人は信仰に生き、ある人は仕事に生きる。あるいは欲望としての金とかセックスとか、知的好奇心とか。んでもやっぱ気のあった伴侶があると人生に意味と充実を与えられた気になる。でも「気のあった」というとこには個人差があるから、そういうひとに一生出会えない人もいる。

そういうとき「女」は「永遠」で一生届かない対象になる。蜃気楼のようにおぼろげに見えていても。


不滅 (集英社文庫) -
不滅 (集英社文庫) -

存在の耐えられない軽さ (集英社文庫) -
存在の耐えられない軽さ (集英社文庫) -


テオ・アンゲロプロス、1995、「ユリシーズの瞳」: muse-A-muse 2nd
http://muse-a-muse.seesaa.net/article/213903209.html



あるいは、異性にそういったことを仮託し期待することがリアリズムを離れた妄想といえるのかもしれない。「−y( ´Д`)。oO○おっさんがウイスキー片手にバーでナルシスしてる村上小説きめえm9(^Д^)」「#女とは マスキュリズムm9(^Д^)男女不平等セクシスト乙乙ですぅ 」的な。

しかし、そういった妄想-思考も一定の積み重ねを超えれば強度を伴った磁力を帯びるようになる。



「妄想乙」「市民社会の建前的にはm9(^Д^)」ついでにいうとこの短篇集が全体として不倫な男女をモティーフしてるところもそれに関わるのだろう。不倫あるいは単婚的な付き合いから離れたもの。


ただ「不倫の刺激をテーマにしてる」というよりは「結果的に不倫だった」ぐらいの。なので不倫的なものの是非やそれを通じての心の揺れなどは焦点されない。


ではなぜ不倫やポリセク的なものが装置として要請されたのか?


それは市民社会的なタテマエ-定型では満足しきれない、違和感がのこる男女がそこから「異世界」にずれる必要があったから。もう少し言えば、そういった定型の中でタテマエ的には「あら、しあわせねえ」とされていて、当人たちもそれを演じていてもどこかにのこる不満-不自由から逃れるために別のチャネルを試してみたかったから、かもしれない。

しかし、不倫的なものが常態になってしまえばそれ自体がマンネリとなりノルマ的になってしまうようだけど。


以下ちょっと小説からはずれるけど




上戸彩『昼顔』より過激!「妻も夫も公認で不倫」を実験してみた結果…|LITERA/リテラ 本と雑誌の知を再発見
http://lite-ra.com/2014/09/post-492.html


「わたしたちは、しるべのない深い森にふたりで足を踏み入れました」


既婚女性たちが大いに共感したのは、男遊びを繰り返すことで高圧的な夫から自分を守ってきた裕福な主婦を演じる吉瀬美智子の本音すぎる台詞にもあるだろう。

「結婚は平穏と引き換えに情熱を失うものだから」
「恋愛すれば、夫のパンツだって気前よく洗えるわ」
「どうして穏やかに笑っていられたかわかる? 不倫してたからよ」



もちろん、オープン・マリッジがアメリカで市民権を得ることがなかったから日本に根付くこともなく、いまも昼顔妻のようなものが話題になっているわけだが、失敗の要因は意外なものだった。オープン・マリッジがうまくいかなかったのは、夫婦で“浮気数の競争”になったからなのだ。

 社会学者ランドル・コリンズの『脱常識の社会学』(岩波現代文庫)によると、一般的とされる夫婦の場合、その収入差が関係に力を及ぼすように、オープン・マリッジを行った夫婦の場合は「他に何人の性的パートナーをもっているか」に依存するという。すなわち、「どちらが性的により好ましいかという競争」になってしまうのだ。こうした競争になったとき、いまも昔も社会では女のほうが勝つ。結果、男性は「分が悪く」なり、相手のほうが「得をしている」と思うようになる。「最初にオープン・マリッジをいいだすのはどちからといえば男性であるのに、それを終わらせたいと思うのも男性の方なのである」というから、皮肉な話である。




もともとは現時点での生活-ノルマで感じている不満-疎外のようものからズレるためにすこしずつ踏み出していった異世界で、それ自体がノルマとなり不自由を生じさせてしまうということ。

そこでは不倫や性欲、あるいは、「なん人と関係を持っているか」といったところに無意識なうちに縛られて「自由」の意識から遠ざかっていたからかなあ。。


なので、不倫なんかにずれなくても生活満足する人たちは多数いるし、反対に不倫にずれてくうちにそれが第二の家庭、ノルマみたいになってなんだか落ち着いてしまう人達もいる。






なんか論点が拡散してダラダラした感じになっちゃったけどいちお振り返れば、「とりあえず自分の中の自由を意識して、それがうまくいってないときはその原因を潰すようにする」「タテマエ社会の中で衣食住足りてても不自由な場合がある」「そういったタテマエ-強者の定律からズレることは女々しい・弱者の言い訳とかいわれることもあるかもだけど、その部分を考えていくのが文学」「生活的実践としてはそういった場面で不倫なら不倫に走るのもいいけど、そのとき却ってそれに縛られて不自由にならないように(理想としての女や男を失わないように」








フォースと共にあらんことを(フォッフォッフォッ










posted by m_um_u at 18:39 | Comment(0) | TrackBack(0) | レビューこのエントリーを含むはてなブックマーク
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]


この記事へのトラックバック