2014年03月06日

ウクライナと「帝国以後」



ウクライナ問題についてまだTLでざわついてるんだけど、けっこうアメリカ寄りの厨めいた見方でなんか違和感だなあってことでメモ的に。「戦争になるー」とか「ロシアの帝国主義がー」とかひどいのだと「ナチス、全体主義の再来がー」みたいなの。


なんとなく国際関係理解していれば、現在のシステムというのは世界システム論的なもたれあいしてるわけだから少なくともG8入ってる国がそんな無茶するわけ無いじゃんつのはわかると思うんだけど、その辺の感覚が根本的に違うのだろう。バカ日本地図的な認識の違いというか。

歴史的にウィーン体制、第二次世界大戦後の国際法的な規定によってもう無茶な侵略はできなくなったし、だいたい帝国主義的に侵略してもそんなに得るものがない。レントとプロフィットなあれで、たとえば侵略して土地や機関経済を奪ったとしてもそれを金に替える段階で他の国がそっぽむいたら金にならないわけで…。「だったら奪った土地や機関経済を利用して当該帝国内の経済圏だけで暮らしをたてる」っていってもそういう貧しさに立ち戻れないぐらいにいまや世界はつながってる。


なので、WW2以降の戦争というのは「主権侵略」ではなく「当該国に依る要請があったので」「人道的に見過ごせないので」みたいな正統性が必要になってる。


今回の場合、クリミアへの実効支配の是非ということだけどロシア側の言い分としては「ウクライナの元首相から要請があった」ということ。及び「あれはロシア正規軍ではなく民兵だ」ってこと。


ウクライナ情勢、雑感: 極東ブログ
http://finalvent.cocolog-nifty.com/fareastblog/2014/03/post-b4c8.html


その辺はけっきょくタテマエかなあって疑念はぬぐえないんだけど、全体の関係から考えても現在ロシアがゴリ押しでクリミアを実効支配する必要性というのはそんなにないように思われる。

黒海 → 中央アジアへの戦略的要地として必要ってのはあるだろうけど、ウクライナは天然ガスの値引きやめるって脅したからそのうち還ってくるだろうし(EUもアメリカも金くれないだろうしね)。


だいたい今回の件は軍事(あるいはIR)レイヤーで考えるようなはなしでもなく国際政治的な話のなかでのボヤとか外交カード的なものの一つにすぎない。


クリミア・ウクライナ問題を黒海周辺諸国とリンクして俯瞰するまとめ | Kousyoublog
http://kousyou.cc/archives/6140


kousyouくんてきには黒海周辺の旧ソ連国とロシアとの関係、つまりロシアによる当該国併合に関するモデルケースになるかな?(特に実効支配ゴリ押しが結局通じるかどうかあたりで?)てのを見てて、そういう面もあるかなあとは思うけどそこまで大きな問題でもないような。

実効支配にはならない/する必要はないてことではあるけど結果的に何年かしてウクライナもクリミアもロシアに還ってくるだろうし、今回の件で東欧・中央アジアにおけるアメリカによるプレゼンス・影響力の低下、ロシアのプレゼンスの向上が見て取れた、ぐらいにおさまりそう。あと日本やEU(特にドイツ)の親露が進んじゃったねえ、ぐらいの。



トッドの「帝国以後」からだと何年か先にバルト三国やベラルーシ、ウクライナ(小ロシア)を再びロシアが吸収するぽい。それは国力的にロシアが資源保有国だから。輸出黒字だし。人口動態的には減ってきてるので安定期だからそんなにこわくない(現在のところ激しい動きはないだろう)とかなんとかだけど


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そういうところに冷戦の構図で入ってきてるのがアメリカなわけで、、EU、トルコ、ロシアていうエリアな問題からするとよそ者はアメリカなのよね。。まあそれで均衡がもたらされてる面もあるのだろうけど。あとトッド的には「実体経済のないアメリカが威信-信用を保つために小国相手の示威的戦闘を繰り返してる」みたいな見方。まあヤクザと同じだけど。


アメリカの釣餌はIMFによる資金提供ぐらいしかないけどこれは疑似餌だからウクライナがいつも損食ってるだけで、今回もしばらくしたらなんか結果出るのかもだけどってあれで。。 ウクライナだけの問題っていうか長期スパンで言えばバルト三国とベラルーシ、トルコなラインも含んだ問題になる。そして長期な問題だし、資源国であるロシアとしてはそんなに焦らなくても自分の経済体制が整えば自然と吸収できるだろう、って構えはありそう。

ウクライナとかグルジアは積年のソ連強行政策かなんかで反発してるところもあるけど、「家族型としては同じだから吸収しちゃうだろ−y( ´Д`)。oO○ロシアが経済的に安定すれば」、てのがトッドの見立て。バルト三国も。

EUはほぼ死に体でドイツが担ってるのだからEUとロシアについてはドイツとロシアの関係で、ヨーロッパとしては対アメリカも含めてロシア取り込めたほうがいいんだけどとりこまれてもなあってあたりがEU首脳の外交における腕の見せどころになるかんじ。


まあそこまで青写真どおり進んでくかは分かんないけどアメリカ中心な報道だけで一方的にロシア悪者+残虐後進国て見方してたら見えてこないものもあるようにおもう。


あと、トッドのこの本は主にフランシス・フクヤマ的なアメリカ自由民主主義ネオコンdis + ハンチントン的なアメリカ価値観中心に基づくイスラム野蛮扱いdisなんだけど、「アメリカの世界への紛争介入は弱小国を選んだ示威的戦争だ」とか「アメリカが工業生産-輸出的には赤字なのに基軸通貨と需要の中心となることで資本を集めて経済回してる」あたりはなんかゴリ押し偏見ぽいので当該IR(軍事)、金融本あたりで裏とりしてこうとおもう。




まあでもとりあえず、こういう視点からすると今回の件というのは単に「ロシアによる旧時代的な帝国主義的侵略」というわけではなくポスト冷戦・911の「帝国以後」な国際関係の中での政治的な事件のひとつだったと言えるようにおもう。

「冷戦時代に遡るのか?」というよりは「イラク戦争のときからのアメリカ・EU・ロシア・日本な政治関係事案が未だ続いてるんだよねえ」て感じ。


イラクのときは逆にアメリカがロシア的な横暴をして国際的にイカンを買い、EUとロシアの親交を強め、アフガニスタンへの経路を示すことでロシア-アメリカとの関係も作った。そういうことを世界は覚えてるだろうから今回の件というのはわりと穏便に済まされそうにおもう。というか、EUや中国的には穏便に済ませてくれないとはた迷惑なだけなので(まあアメリカもだろうけど)。


結果的にアメリカ以外の国の協調関係が強まったとしたらロシアの外交勝利になるのだろう。


パイプラインなアレ的にはEUはできればロシア回避で直接アゼルバイジャンから天然ガス仕入れたいところなのだろうけど、まあそれも無理っぽいし、やはりロシアとの現状維持できたほうがいいのだろうし(特にドイツなんかは)



正直、現状のウクライナをEUに加盟させてもそんなに意義あるのかなあってとこだし。。


ウクライナとはどういう国か?: muse-A-muse 2nd
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ウクライナは単純には西は穀倉で東が鉄鋼。東の鉄鋼ほか近代産業はソ連時代にロシアたちの入植によって開拓されていった。


そういうのもあって近・現代のロシア → ウクライナの視線というのは「田舎のウクライナ」「進んだロシア」て感じ。

まあそのロシアの近代化もピョートル大帝のころにドイツ人を移入して外国人村作ってできあがっていったものなんだけど。もともとはキエフ・ルーシがロシア・ウクライナの原点だし。

んでも近代化の過程にはそういった逆転現象が起こり、その辺の蔑視の視線をもとにボリシェビキ下でゴリゴリになったソ連からウクライナでコルホーズが進められ、結果的に飢饉 → 大量の餓死者が生じた。それはある意味ジェノサイドとして記憶されてるみたい。

ウクライナの右派につづく怨恨、あるいは「ロシアは嫌」って気持ちはこのへんの記憶が強いのだろう。

右派を呼び込んだのはそのほかに現首相の腐敗体制に対するプロテスト的な面が強かったようで、そういった意味ではイデオロギーとかはどうでもよかったてのもあるのだろうけど。



ウクライナ東にロシア人たちが多いのはゲゼルシャフト化のときに入植したロシア人たちの名残り。


クリミアも同様だろうけど、クリミアの場合はキエフだかに親しみがあったフルシチョフがモスクワからウクライナのほうにクリミアを行政移管してしまったことが大きい。フルシチョフほか当時のソ連首脳部にとっては単に県の範囲を変えたぐらいのものだったので。

結果的にもともとロシアの土地だったクリミアがウクライナに移譲され独立してしまった。


なので住民投票かなんかすれば当然クリミア人達はロシアに帰りたがるのだろうなあとか思うけど、まあこれも何年後になるんだか(あるいはその前にウクライナがロシアとくっつこうとするんだか)よくわかんないけど。

とりあえず現状ではクリミアはロシア人達多いのだからそこにウクライナ全体から「嫌ロシア」プレッシャーくらってたら住民たちビビるよなあ、ぐらい。



まあいずれにしても今回の結果がバルト三国・中央アジアといった旧ソ連、黒海から連なる中東におけるロシア・アメリカの国際関係にとってどう着地するかってのは見極めとこう。






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関連:
【オピニオン】クリミア情勢の教訓―試される米国の事なかれ主義 - WSJ.com
http://jp.wsj.com/article/SB10001424052702304085204579420314016320126.html



posted by m_um_u at 18:58 | Comment(0) | TrackBack(0) | 政治このエントリーを含むはてなブックマーク
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