2013年11月14日

阿部謹也、2006、「近代化と世間」

読了したのでいちお感想。

結論から言うと本書はイマイチな印象だった。

理由として、日本的な「世間」の位相、と、ヨーロッパと日本その他にも共通するゲマインシャフトの価値やコミュニケーション様式をいっしょくたにしているように思えたから。

西欧にも世間的なものはあるだろうけどそれと日本の世間は違うだろうし、世間=ゲマインシャフトではないように思う。


¥ゲマインシャフト¥世間


ってディレクトリで、「ゲマインシャフト(近代の都市生活以前の村落共同体における生活様式と価値観)」の下に「世間」があり、「世間」の内容が各国、各クラスタによって変わっていくのだと思う、自分的には。



というわけで今回もメモ程度で


近代化と世間―私が見たヨーロッパと日本 (朝日新書)
阿部 謹也
朝日新聞社
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ルネサンスは15世紀と呼ばれていたが最近では12世紀といわれる
(ex.ジォットー、アベラール、フーゴー)


贈与慣行は名誉や身分と不可分の関係を持っていた。

モースは次のように言っている。

「贈与義務はポトラッチの本質である。酋長はみずからのために自分の息子、婿あるいは娘のために、さらには死者のためにポトラッチをしなければならない。酋長は聖霊につきまとわれ、その庇護を受け、また財産を所有しているということを証明してはじめて部族、村落、家族に対して権威を保持しうるし、また種族の内外を問わず、諸酋長間で彼の地位を維持しうる。そして彼がその財産を証明するただ一つの方法はそれを消費し、分配して他の者を圧倒し、彼の名声の影に追いやってしまうことによるほかない」


このへんは前のエントリにおけるポトラッチのくだりの補足的に


阿部謹也、2005,「『世間』への旅」: muse-A-muse 2nd
http://muse-a-muse.seesaa.net/article/380156185.html?1384351490



※W.ダンケルト「賤民」より賤民の分類


1)死、彼岸、死者供養:

死刑執行人、捕吏、墓掘り人、塔守、夜警、理髪師、浴場主


2)生、エロス、豊穣

森番、木の根売り、亜麻布織り工、粉ひき、娼婦


3)動物

皮剥、犬皮なめし工、家畜を去勢する者


4)大地、火、水

道路清掃人、煙突掃除人、陶工、煉瓦工、乞食と乞食取り締まり、遍歴芸人、遍歴楽師、英雄叙事詩の歌手


5)(特に共通するエレメントなし)

収税史、ヨーロッパ周辺部の賤民、ジプシー(ロマ民族)、ユダヤ人、マジョルカ島のクエタス、バスクのカゴ、インドのスードラその他非ヨーロッパの被差別者



差別対称として「賤民」とされていった人々の職業など。この辺りを扱っている阿部「死者の社会史」「刑吏の歴史」もそのうち読みたい。




人間狼はおそれの対象から差別の対象へと変貌


死刑を執行するものはかつては司祭など高位のものだった。処刑は執行するものを卑しい地位に貶める行為ではなかった。

しかし13世紀ころから死刑執行に対する嫌悪感が広がり、ほぼ同時に賤民としての職業的刑吏が出現した。

死体の墓掘りや運搬、塵芥(糞尿を含めた)処理や道路清掃も同様


豚や豚を去勢する人が蔑視されるようになったのも古くからのことではない。獣を扱う仕事は本来は聖なる仕事であった。



人狼は都市社会からはみ出されたもの、森(あるいは都市以外の場所)に暮らすものを指した。森は都市に住む者達にとっていつのまにか「異界」となっていった。

平和喪失宣言を受けたものは現代における行政的保護を失う。警察的な庇護も都市の法も。それは網野善彦においては「無縁」にあるポジティブイメージとして語られる印象が強かったが、最初にあるのは「都市からの放擲」ということになる。

そして徒党を組んで都市を徘徊し略奪をする。略奪されすぎないために市民たちはある程度のギフトを用意しておく。

「trick or treat?」、と


つまり北欧の荒猟、ケルトにおける野人の伝承との習合。


テーブルゲームの「人狼」のモチーフなんかもここから来てるのだろう。


「もともと獣を扱う仕事は聖なる仕事であった」というのは網野における「牛童」の話が思い出される。「日本では牛は霊力をもった動物とされ、それを操るには霊力を持ったものが必要とされた。童は大人との境界の存在としてそういったものを操る力があるものとみなされた。しかし実際には牛童は童というには年齢が経ちすぎている人々で『牛童』という名称に意味が持たれていたようだ」みたいなの(「無縁・公界・楽」「異形の王権」のどっちか忘れたけど、たぶん前者かなあ)


「豚が蔑視されていった」という話はユダヤ人のそれと合わせてこれが思い出される。

豚の文化誌―ユダヤ人とキリスト教徒 (叢書ラウルス)
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「ヨーロッパにおける豚の蔑視とユダヤ蔑視には関連があった」というもの。

「ヨーロッパで豚が嫌われてきたのはユダヤ人が豚を食べなかったから。ユダヤ人が豚を食べなかったのは彼らが自身を豚と思ってきたから(キリストが諭しにいった時に子供を隠したので豚にされた。それ以来、ユダヤは自身を豚と思うようになった)」+豚=金の象徴も含意して「良きキリスト教徒」たちは豚とユダヤを差別してきた(ユダヤを豚と呼んだり)

ふつーに考えたらユダヤが豚食べなかったのって単にインド=ヨーロッパ系のアレでヒンズーだかなんだかのあの辺に近かっただけでその辺の合理性関連だろうからこのへんの話も「なにいってんだろ。。」てとこなんだけど、こんなかんじで歴史は修正され構築されるし、それに合わせて物語や慣習も作られ、さも「昔からあったもの」「そうやって当然のこと」とされる。

でもそういった歪み=バロックな感じ、ねじれているのに正しく威厳あるものとしてみせようとしてグロテスクな存在感を出してきたのがゴシックの文化の魅力、ともいえるかもしれない。「薔薇の名前」とか「デリカテッセン」的な暗くて荘厳で陰湿でグロテスクな統制と狂気。



都市は一定の時間ごとに半鐘を鳴らし、鐘の音が届く範囲が都市に住む者達の生活圏(小宇宙)であった。


このへんは以前のネルトリンゲンについてのエントリを思わせる
http://muse-a-muse.seesaa.net/article/379508545.html

世界ふしぎ発見のネルトリンゲン回でもけっきょく「なぜネルトリンゲンが異様なほど城壁に囲まれていたか?」については説明なかったけど、おそらくこんな感じで「外が異界だった」から。現代の感覚にくらべて昔は異様なほどそれを恐れていたし実際危険だったのだろう。人狼的な野盗もいるだろうし、もっとおそろしいのは同じように文明と武装をもった他の都市や他国の侵攻であっただろうし。


そして、そのような都市の囲いは自然を含んだ大宇宙と「人の世」という小宇宙との間にも障壁となることで自然と人(文明)を、俗(悪)と善を分けていった。


後に賤民とされ差別されていった人々は二つの世界、「自然とその理を含んだ大宇宙」と「人の世の理を中心とした小宇宙」の境界にあるものだった。

村落共同体が成立する以前においても農耕、牧畜に従事していた人々がいたのだが、彼らは家単位で小宇宙を形成し、その小宇宙は未だ村の規模をとるまでに至っていなかった。家と宅地こそが彼らの小宇宙だったのである。

しかし村落共同体の成立によって、数十戸の家を包摂する一定の空間が垣で囲まれ、平和空間として成立することとなった。当初それは小宇宙としての家が並立し、小宇宙の結合体として空間的に拡大したものに過ぎなかった。

決定的だったのは13世紀には西欧のどこの村にも教会ができたという事実である。キリスト教会の出現は人々の空間観念と時間観念に決定的な転換をもたらしたのである。


キリスト教による死生観の転換。村落共同体と都市共同体の成立によって、それまで家ごとに大宇宙と対峙していた人々は共同体単位で大宇宙と関わることになった。


一つの例としては、村落共同体の成立する以前には大荘園にしか水車はなかった。人々は領主農場の水車場で粉をひくか、手回し挽臼でひくしかなかった。

しかし村落共同体の成立以後、多くの村は水車小屋を建設した。

人々は自然を克服し始めたのである。












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関連:
「世間」と「個人」と「告解」あたりの話: muse-A-muse 2nd
http://muse-a-muse.seesaa.net/article/379707101.html


中世における公共性(あるいはその萌芽)の構造転換な話: muse-A-muse 2nd
http://muse-a-muse.seesaa.net/article/129773060.html

阿部×網野対談話。このエントリ見た後でtogetterでまとめた阿部側からのこの対談への感想をもう一度見てみても面白い。(公共性の構造転換ということで次のエントリへの引きにもなるか


阿部謹也、「世間への旅」からの読書メモ断片 - Togetter
http://togetter.com/li/589127




posted by m_um_u at 21:46 | Comment(0) | TrackBack(0) | レビューこのエントリーを含むはてなブックマーク
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