2007年02月24日

資源最適化としての格差社会と社会保障に関して

 格差社会関連で、またいろいろなエントリが重なってごちゃごちゃしてきたのでまとめておこうと思う。偉そうに上から物申すって感じではなく主に自分の理解用。けっこう参照エントリが多いので長くならないように心がけよう。


 話がけっこう複雑なのでどっからとりかかったらいいか迷うけど、こういうときはやっぱ通時的に行ったほうがいいな。そういうわけで話の流れ的に前段階のエントリへのリンクをいちお


バブルについての覚書き(@muse-A-muse 2nd)
http://muse-a-muse.seesaa.net/article/34552036.html


 すごく大雑把に要約すると、バブル期以前は外国に車とか売りつけて儲けていられたんだけど、外国さまお得意のルール改正で外国から儲けることができなくなって、仕方がないんでそれまでの儲けを国内で循環させて景気を維持してたんだけど、餅を膨らませすぎてはじけ、それを取り繕うためにごにょごによ〜だのうじゃうじゃ〜だのやったけど決定的な回復はしてないね、ってのが現状。

 で、

 資源が少なくなったのでリストラして資源配分を最適化しようとしてるのがコーゾー改革ってやつなんだけど、その流れにケチつけるために野党側が持ち出した言説が「格差社会」ってことらしい。朝日新聞の特集「ロストジェネレーション」もそういう流れの中で出てきたもの、と。

 朝日新聞の特集に対して、一部の人(というか当事者意識を持っている人)が憤りを感じたのはその無神経さというか、記事のマッチポンプ的性質に対して怒りを禁じえなかったって感じみたい。

 以下、lifeまとめwiki「失われた10年〜Lost Generation?」より、メールに対する鈴木氏のコメントを引用

メール。この10年で失ったのは自信。就活の時、自分の長所だけ答えられずに就職浪人。今は再チャレンジの機会をうかがっています。再チャレンジ支援の政策からフリーターやニートが除外されるとの報道に怒りがこみ上げてきた。情報提供元がR25だっていうのが怒りを倍増させる。
R25はリクルートですからね。フリーターっていう言葉を作った張本人。
自信をなくさせておいて、っていうのでいうと、あえて言うと、朝日がやりたいのは、2000万人もいるんだから、政治的意味があるって主張したいんだろう、っていうのはさっきしました。で、その裏にあるのは何かっていうと、「権力と闘おう」ってことだと思うんですよ。『週刊金曜日』の特集、「私たちはどう生き、どう闘うか」っていうのに現れてるけど、要するに、君たち被害者なんだから、僕らと団結して、安倍政権と闘おうよ、って言ってるわけですよ。つうかさ、まずそれがおかしくて、何でお前らに動員させられて闘わなきゃいけないんだよ!って話なんですよ。それこそ戦前と一緒だろ!って僕は思うわけ。動員のために、お前らロストジェネレーションなんだ、被害者なんだ、自信なくしてるんだって、散々言っておいて。俺らが欲しいのは全然そんなもんじゃねえよ!そういう、否定の言葉を並べといて、一緒に闘おうとかってふざけんなよ!って、すごい思いますよ

 
 「フリーター」という言葉が作られた当初は、「あたらしい仕事の形だ(わーい)」みたいな感じで神輿担いでたリクルートが現在ではころっと手のひら返して、「いつまでもフリーターじゃ将来ないよ?」、みたいなこと言ってたり。んで、「ロストジェネレーション特集」とかいいながら「がんばって正社員ならなきゃダメだよ?」みたいな感じを全体に匂わせている朝日。「失った10年で恩恵を受けなかったのは単純に君たちの努力が足らなかったからだよ」、とでも言わんばかりに。もしもなにかを「失った」のだとしたら、その責任は上の世代にあるはずなのに。

 ちょっと前に、近畿大学の就職課のHPに「フリーター、ニートは欠陥品。人生台無し。 復帰できません。2度とチャンスはありません」って書かれてたことが問題になってたけど(参照)、ああいう雰囲気がけっこうデフォルトで世間に蔓延しているらしい。つまり「フリーター / ニートは働かなくて怖いねぇ」みたいなの。で、就職活動で長年フリーターをやってきた人に会って、「ふつうに話ができる人たちだったんだ」、とか言って驚くらしい。

 
 で、話を戻すと、そういった感じで「格差社会論」自体にマッチポンプ的性格があり、一部の人(っていうか経済学者系)はそれを警戒して話を進めてるみたい。以下典型的なものから


「格差是正法案」は格差を拡大する(@池田信夫blog)
http://blog.goo.ne.jp/ikedanobuo/e/92e2c979658285d94ba707dd6be72130


 「非正規雇用者の最低賃金引き上げ要求は目先のギロンだ。企業の論理としてはそれによって非正規雇用者雇いにくくなるだけだし」、と。池田センセは典型的な構造改革派のようなのでこういう論調になっているのは分かるんだけど、やっぱちょっとびみょーな感じがする。

 この後、いちお「ワーキングプア的実態に対してはベーシックインカムとか必要だろうけど」、って言っておられるけど。んで、ネオリベな論調としては「(いま企業を優遇して)経済成長によってパイが大きくなれば、だれもが利益を得ることができるのである」、って感じに落ち着くのだろうけど、ぼく的にはこの経済成長のところの実感がない。


 どうやってやるの?(イノベーション?)


 んでも、日本の製造業なんか全体的にイノベーションのジレンマって感じだし、海外シェアでも韓国に押されつつある。あと、ITとかバイオ?でもいまのところかんばしい話聞かないしなぁ。じゃあやっぱサービス業に最適化するって感じなのだろうか?でもやっぱ実感がない。

 アメリカは雇用の60%をサービス業に転換して成功してるっていうけど、これって政治(軍事)的背景を傘に比較優位とってお金溜め込んだ結果じゃないのか?んで、その財を循環してるだけのような気がするが。サービス業を輸出するなりして外国から収益上げてたりするのだろうか?


 んで、次


問題は格差ではなく生産性だ(@池田信夫blog)
http://blog.goo.ne.jp/ikedanobuo/e/5e9dd31e52079ca896b1dcce4f56cc9f


 文脈的には山形さんとの「生産性 / 賃金」ギロンを受けての流れなので単純に格差社会是正を論じた論調ではないのだけれど、やっぱICT労働のパイが無限にあるとは思えないのでゴッドランド(パイの循環)に戻ってくる感じがする。

 雇用の流動性を上げてIT出稼ぎとかを目指すって感じだろうか?あと、勉強して能力つけろっつってもワーキングプア労働者にはそんな時間もカネもないんだけどなぁ・・。


 池田センセの話をもうちょっとマイルドな語り口にしたのが以下


格差解消も大事だが“成長”と“改革”の手を緩めるな - ビジネススタイル - nikkei BPnet
http://www.nikkeibp.co.jp/style/biz/column/shusei/070222_17th/


 内容はタイトル通りなので特に要約しない。正論だと思うけどどの辺りで成長を確保するかについて書かれていない(内需拡大とか?)。



実は上から下まで大変革の途中であること(@HPO機密日誌)
http://d.hatena.ne.jp/hihi01/20070224/p1


 資源最適化による本格的な格差社会の到来について。ってか、東京一極集中と雇用格差の状態化へのひできさん的実感という感じ。資源自体が少ないのだから「選択と集中」というオプションは仕方ないとは思うけど(cf.「皆貧乏になるか、成長しているところを優先するか」)。保障は考えないとなぁ(あとアノミーやら反動)



ホワイトカラー・エグゼンプションとイノベーションと格差問題と40年体制2.0、またはこの道はいつか来た道。(@svnseeds’ ghoti)
http://d.hatena.ne.jp/svnseeds/20070201#p1

 「生産性の低下に対して、生産性の高い資源(労働力)の労働時間を増やすことで生産性を担保する、というのはベターな選択。んでも、リストラ(構造改革)に時間かかりすぎるのが心配なので、リフレ政策とってカンフル入れたほうがいいんじゃないか」、って感じか。

 ホワイトカラー・エグゼンプション(以下:「WE」と略記)については「残業代カットで馬車馬労働」のほうがクローズアップされがちだけど、当初のコンセプト通り「稼げるところで稼ぐ」的なものが重視されるといいのかもしれない(関連
(※そのときには労働資源の限界値の問題が生じるだろうけど、割愛)


 てか、あまり馬車馬させたり格差無視して突っ走るとやる気なくなってラッダイト(あるいはサボタージュ)起こるかもね、って懸念がある


ニューズウィーク日本版「格差社会はいいことだ」、やりすぎ(ーー)(@Economics Lovers Live)
http://d.hatena.ne.jp/tanakahidetomi/20070216#p2



 そういうところには社会保障によるケアが必要なんだけどどういうものが考えられるか。とりあえずたたき台としては以下


NHKスペシャル「ワーキングプアII 努力すれば抜け出せますか」の感想
http://www1.odn.ne.jp/kamiya-ta/workingpoor3.html

番組総括(ってか内橋さん意見?)として

(1)ベーシックインカムを決める
(2)そのために所得の再分配機能を高める
(3)再分配の原資は税制優遇されている大企業に担わせる

辺りが考えられるのではないか、と。




若い世代に求められる政策とは?(@フリーターが語る渡り奉公人事情)
http://blog.goo.ne.jp/egrettasacra/e/7851259d901e9ad46afbbaef6bbec6d9

 一部抜粋(※長くなるので一部割愛するけど、ほかにもいろいろあるので上記リンク先に行ってみてください)

○若い世代を正規雇用した企業を減税する
これは自民党の機関紙「自由民主」でもとりあげられている。(このあいだ国立国会図書館関西分館に行ったときに読んできた。)


 この辺りは上述(「大企業に担わせる」)に対応

○生活保護基準の切り上げ・拡充
イタリアの生活保護は、日本の幾種類かの生活保護をあわせたくらいもらえる。
また、生活保護を受けたら一日二日の日雇い労働もダメだとか、百万円程度の貯金も持ってはいけないといったことは廃止したほうがいい。


○ベイシック・インカムの導入。
いつもみなが座る席があるとはかぎらない。長年の使い捨てアルバイトのためにスキルが身につかなかったり人間不信が強まることもある。そんな場合にも憲法保障されている18条生存権を護るためには現金が必要だ。



 ベーシックインカム関連だといまのところ以下のエントリをクリップしてる。長くなるので今回は言及しない


バッククラッシュ論争の中の人はゼロサムゲームを戦っているのか?(@アンカテ)
http://d.hatena.ne.jp/essa/20060721/p1

次のビッグイシューはベーシックインカムだ!(@アンカテ)
http://d.hatena.ne.jp/essa/20050912/p1

「WEB進化論」的ネット経済とベーシックインカム(@アンカテ)
http://d.hatena.ne.jp/essa/20060413/p1

ベーシック・インカム(@インタラクティヴ読書ノート別館の別館)
http://d.hatena.ne.jp/shinichiroinaba/20060806/p3



 んじゃ、イノベーションとまってる先達の対策としてはどのようなものがあるか


オランダ・モデルのワークシェアリング 
http://www1.odn.ne.jp/fpic/familio/familio030_a.html


 赤木さん辺りには「わっわわ・・わーくしぇありんぐktkr」とか言われるだろうけどいちお。「ワークシェアリング」っていうか理念型としてのWEについて。「家族の時間ができてよかったねー」って反面、「愛社精神の薄れ」、「熟練工やエキスパートが育たなくなり製品の質的劣化が起こっている」などの問題もある。あと、実際には掛け持ち労働しちゃうので却って家族の時間が少なくなったり。

 あと、社会保障が過ぎると国の体力が低下する問題がある。そのあたりについてオランダでは基本的に、格差社会常態化して3K労働は外部化(外国人労働者に委託)にしてるみたいだけど、そうすると治安の問題が出てくる。



 社会保障的に厚遇されているということで評判のスウェーデンについて


 効果を失った積極的労働市場政策(@スウェーデンの今 )
http://blog.goo.ne.jp/yoshi_swe/e/5e5b6928ce3bd69a246f11fa406b1ad6

 スウェーデンモデルの限界。長いので今回はちょっと要約しない。産業成長期にはよかったけど、いまはいろいろ問題が出てきているらしい。関連で


 小宮隆太郎の60年代後半スウェーデン経済論(@Economic Lovers Live)
http://d.hatena.ne.jp/tanakahidetomi/20070127#p2



 あと、イングランドモデルが良さげとかいう話をみたけどチェックしてない。とりあえず各国の労働問題・社会保障(政策)については以下


独立行政法人 労働政策研究・研修機構/海外労働情報
http://www.jil.go.jp/foreign/labor_system/labor_system_top.htm


国内ではやはりここら辺が資料が多そう


大原社研
http://oohara.mt.tama.hosei.ac.jp/

ちなみに大原社研の歴史について
http://oohara.mt.tama.hosei.ac.jp/nk/column04.htm 

関連:石井のお父さん 
http://www.pal.pref.okayama.jp/info/tokubetu/ishii/ishii.htm



 後半、やや急ぎ足になってしまったが、以上が大体のアウトライン。関連でもう一つテーマが絡んできてるけど、冗長になるのでエントリ分けよう。






--
関連:

最近の格差社会論をめぐる諸々 - 「ロストジェネレーション」から(@muse-A-muse 2nd)
http://muse-a-muse.seesaa.net/article/34551889.html

格差の中で生きていく道の一つとして


イノベーションを阻害するもの(@IT Pro)
http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/COLUMN/20070206/260881/

一部だけど、あの中国から「共産主義」といわれてたりするらしい・・。



posted by m_um_u at 20:28 | Comment(0) | TrackBack(1) | 経済このエントリーを含むはてなブックマーク
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Excerpt: なんか今日は思ったより忙しいらしい。論の途中だけど、はしょっちゃおうっと! 実は、日本はいま天地ひっくり返しくらいの、そう、たぶん明治維新以来の大変革の真っ最中なのだと最近思う。 明治とは、実は中央..
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