2007年02月20日

ドキュメンタリーブームと昨今の動画(映画)市場について

 予告通り、先日の「不都合な真実」関連でアメリカのドキュメンタリーブームの話。まずは以下の記事から


 米でドキュメンタリーブーム、娯楽大作しのぐ 安い製作費で手堅い利益 深い取材に評価上々(@イザ!)
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/entertainment/movie/23696


 ドキュメンタリーのほうがストーリ映画よりも制作費が抑えられて手堅い収益を得られる、って話。製作段階のどの辺りでコストを削減できるのかということについて詳細は書かれていなかったけど、ストーリー作りとか「ドキュメンタリーなので派手なセットを使わなくていい」ってとこかな、と思った。てか、後者は少し語弊があるか。大作系ドキュメンタリーとインディーズ(ミニシアター)系ドキュメンタリーとでは作りが違うかもしれない。以下、引用

こうした硬派な作品が続々と登場した結果、「観客にとってもドキュメンタリーが身近なものになり、ビジネスとして成立しやすい状況になった。資料として保存したいと思う人も多く、DVDも売りやすい」(米映画評論家兼映画製作会社勤務デビット・チュートさん)環境となった。

 「DVDではける」ってところがポイントか。「製作コスト / 観客動員」というだけではなくそこにDVDの売り上げも加わる、と。
 
 たしかにおっさんになってくるとストーリーものの分かりきった仕掛けには飽きてニュースやらドキュメンタリーのほうを楽しみにするという傾向はあるかもしれない。てか、ぼくがそうなわけだが。日本だと「プロジェクトX」人気なんかに象徴されるのだろう。そしてNHKエンタープライズうはうは

 ほかに気になったところとしては以下の記述があった。

もっとも、ハリウッドで新しい作品を作り出す力が弱まっていることも背景にある。リメイクやミュージカル映画がブームなのがその表れだ。ハリウッドの王道を行く娯楽大作の魅力が、薄れつつあるのは間違いない。

 これについては大分前から言われていることで、その影響で映画産業からゲーム業界に人材が流動しているとかいう話を以前に見たことがある。「ゲームのほうが創造性を感じる」とか何とか。ゲーム業界とハリウッド映画の関係としてはタイアップというかメディアミックス的な関係もあるみたいだけど(参照)。そういうゲームは得てして面白くない。でも、「フラット化する世界」の話にあるようにフラット化によって映画産業にもガイジン部隊導入とかあるかも(ギョーカイ体質にもよるだろうけど)。



 閑話休題

 後段のこの記述も気になった。

米ブッシュ政権を批判した「華氏911」(04年)のように、ドキュメンタリーの形式を巧みに装い、明確な目的のもと、情報や世論を操作しようという作品の登場を懸念する声もある。人々が良質のドキュメンタリーに慣れ親しんだ結果、今では「華氏911」はドキュメントとプロパガンダを組み合わせた「ドキュガンダ」の元祖と揶揄(やゆ)されている。

 ある方面からは「不都合な真実」もドキュガンダの一つとして捉えられているのかもしれない。しかし視聴者もそういった文脈を承知した上でコンテンツを楽しんでいる傾向もある。「Borat」のような「ドキュメンタリー」+「エンタテインメント」(ドキュテインメント)系作品が受け入れられているのもその証左といえるだろう。


 そういや、極楽トンボのこれもドキュテインメントとして評価が高いみたい。

 極楽とんぼ問題とフェイク・ドキュメンタリーの世界(@POP2*0)
http://d.hatena.ne.jp/snakefinger/20060722/p5

 そのうち見よう。




▽ドキュメンタリーブームとネットの自主制作型動画コンテンツ市場


 「ドキュメンタリー系は制作費が安い割にエンタメ系と同等の満足感をユーザーに与える」ということからやる気とアイデアさえあればインディーズ系クリエーターにもチャンスが生まれることになる。ネットを通じて直接販売すればJASRAC的問題も迂回できそうだし。

 問題はコンテンツの流通経路とかプロモーションだけど、その辺についてはこのエントリが参考になった。個人営業のクリエーターが実際に成功しているという話。



 「あるある」捏造事件と「ミドルテール」新メディア (@Tech Mom from Silicon Valley)
http://d.hatena.ne.jp/michikaifu/20070201/1170363561

ハリウッドの売れないプロデューサー二人が制作している、コメディ・ポッドキャストの人気番組「Ask a Ninja」(忍者のかっこうをした人が出てきて、時流ネタを面白おかしく語る)は、Revverで少々稼げるようになったと思ったら、最近ついにDVDまで出たらしい。


 Roketboomなんかもそうだけど、広告・流通などで中抜きできたら個人に入ってくる額が大きくなるな。ただ、気になるのはこのときのattentionの集め方。制作会社が不採算覚悟で持ち出して、それが偶然口コミで広まったって感じだろうか。



 まぁ、そんな感じで創作のためのコストが低くなっているので、動画市場への障壁が低くなってきているらしい。んで、そういうの見た人々も動画アップしたくなる、と。昨今のVideo blog(Vlog)、Vodcastingの活況ぶりはこういう流れなのだろう。

 で、その流れを狙ってガジェット売ったり↓


 オンライン編集ツールが生み出すビデオ制作者の新市場(@ITmedia)
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0702/05/news022.html


 でも、こういうのってプロのコンテンツ屋から見ると「ちょっと待った」って感じなのだろうか?先日のイトイさん話でもあったけど「Web2.0ってなによ?」って感じの。巷のおしゃべりを無編集で流すみたいなのに対してはプロの意識が刺激されるのかもしれない。

 そういうのに対してはこういう意見もあるけど


 草の根映像の今後?(@発熱地帯)
http://amanoudume.s41.xrea.com/2006/09/post_280.html


 「ネットユーザーにとっては1週間程度満足できる作品であればよく、その意味では1次創作でも2次創作でも関係ない」って話。

 てか、アレかコレかって話ではなくCGM的なものもプロ的なものも残っていく(選択の幅が広がる)ってことなのだろう。もしくは、ガジェットに合わせてコンテンツの尺が変化するというか。ケータイ族は短いコンテンツ(山場がいっぱいあるコンテンツ)が好きみたいだし(cf.先日のミヤダイさんの話)。


 これ関連で個人的に思うのはドキュメンタリーのようなジャーナリスティックな動画であれば著作権に関する訴訟リスクは少なくなるかもしれないということ。肖像権などの別の訴訟リスクはでるかもしれないけど、そういうのは個人間で済みそう。


 関連でこんな話もある(※詳細未読)


 The deep changes in media(@Social Media)
http://www.socialmedia.biz/2007/01/the_deep_change.html


 動画がonlineになることによって単なる足し算以上の効果を期待できる、と。たとえば、 YouTube, Citizen Journalism, video-blogging, あといろんな新興artとのマッシュアップ。動画市場はNBCを含めたold media、そこからちょっと抜けたNewscorp(MySpace)、skype(venice)、Google(YouTube)と役者が揃ってきてる。


 動画コンテンツのオンライン化についてはこの辺りの動きも興味深い。


 Live sex on-demand video coming to US hotel rooms?(@Boing Boing)
http://www.boingboing.net/2007/01/17/live_sex_ondemand_vi.html

 エロビデオ(live)のオンデマンドがホテルで見れる用になるとかどうとか(詳しく読んでない)。エロコンテンツはメディア(ガジェット)変化の旗頭になる傾向があるのでこういう動きは注目している。

 アメリカのエロ動画の市場規模はこんな感じらしい。

Americans spents $1.6 billion last year on-demand and pay-per-view video



 でも、こういうのって日本とどう関係してくるのだろうか?



▽日本映画市場との比較


「邦画ブーム」に見る、負け組逆転の可能性@Tech Mom from Silicon Valley)
http://d.hatena.ne.jp/michikaifu/20070202/1170447851

 昨今の映画へのテレビ局による影響力(お金・人材・宣伝)へのポジティブな見解。

 「映画はパケ(DVD)売りしやすいし、TVほどの縛りがないため人材の流動性が比較的大きく名の売れた俳優でも単館系に出てくれる」、と。そういや役所さんとかもそういうの出てたな(「眠る男」)。でも、これって小栗監督だからインディーズとかでもないか。


 DVD売りについてはこの辺にエントリが続く

アニメと邦画に見る、テレビ局の立ち位置の違い @Tech Mom from Silicon Valley)
http://d.hatena.ne.jp/michikaifu/20060808/1155010389

 「テレビ局のノウハウがDVD売りに役立ってる」って関連では以下のエントリを思い出した


 陽気な"テレビ・コンテンツ化社会"が世界を回す(後編)(@犬にかぶらせろ!)
http://mirror-ball.net/2006/12/post_90/

 主にパブリシティ主体の現行のテレビ放送についての解説。例として、「電車男」などに代表されるコンテンツの使いまわしが上げられる。んで、「DVD売りで最終利益ゲット!」、と。っていうか、いまはDVD売りを意識したコンテンツ作りになってるのかもしれない。それによるコンテンツの内容への影響としては「エロの敵」の話(cf.「DVDになってユーザーが場面場面で飛ばすため、山場ばっかりの作りになってしまった」)なんかを想起するけど、この話って前述のミヤダイさんの話とも絡むな。


 閑話休題


 邦画に関するエントリで最近気になったものとしては以下がある


 2006年度日本映画産業統計を読む(@TRiCK FiSH blog.)
http://d.hatena.ne.jp/TRiCKFiSH/20070204/p1


 全体的に興行収益に関する数値データからの細かい分析が参考になる。ネタ切れ感は日本映画にも共通しているみたい。ここで気になったのは「海猿」をニューヨークで上映したときの反応(危機的状況でケータイ使って愛を告白してるの見て爆笑)に対する考察。

NYの鑑賞者は、当然『海猿』のドラマ版を観ていない。だから劇場で日本独特のあのTVドラマ的リアリティを観て爆笑したのだ。当然起こる事態だと言えるだろう。

 「文化的差異?」っていうか「文脈の切断」って感じだけど、海外上映で売れなくても、DVDが国内ではければいいのか。あと、ハチクロ映画がヒットしなかった理由への考察も面白かった(サブカル市場の小ささ)。

 あら、松谷さんところにもDVD関連エントリあるわ(「DVDが高い理由」)。あとで見よう
http://d.hatena.ne.jp/TRiCKFiSH/20060418/p1



国内自主制作(ネット配信)系としては大きな動きはつかんでないけど、以下が気になってる。


 893239【ヤクザ23区】〜893239とは。
http://www.893239.com/what.html

 蛙男商会
http://www.kaeruotoko.com/



 前者は実写系、後者はアニメ系。ドキュテインメントの動きは見えないなぁ・・。どっかでやってるんだろうか。


 そして、こういう流れを受けて自主制作系動画が増えるかどうかだけど、これも未だ良くわかんないなぁ・・。誰かが言ってたけど、「アメリカ人とかはYouTubeに自分を中心としたコンテンツとか自分の家族とか旅行みたいなコンテンツをアップするけど、日本人は商業系コンテンツを転載する傾向がある」、っていうのもあるし。そういうのは「アメリカのblogがジャーナリスティックな内容が多いのに、日本のは日記風のが多い」、っていうのとも繋がる。

 でも、この辺はびみょーな感じがする。

 

 アメリカ人はYouTube以外のところに違法系動画あげてるだけかもしれないし、アメリカ人もジャーナリスティックな内容以外のものをblogに書きたがる傾向がある、という話もある(参照)。日本人にしてもblogで日記的なものを好むんだったらそういう動画をアップしたいという欲求はどこかに隠れているのかもしれない。単に動画アップに慣れてないだけなんじゃないだろうか(もしくは環境が整っていない)。


 まぁ、そんな感じでネットの動画状況についてはちょっと保留だけど、ニコニコ動画とかRimo(あるいはDARAQ)はけっこう面白いな。




--
関連:
「Japanese film industry's new ecosystem」(@Tech Mom from Silicon Valley)
http://d.hatena.ne.jp/michikaifu/20061128/1164746260

※未読


Online Video Industry Index
http://www.readwriteweb.com/archives/online_video_index.php




タグ:動画市場
posted by m_um_u at 22:31 | Comment(1) | TrackBack(1) | メディアこのエントリーを含むはてなブックマーク
この記事へのコメント
Slashdotに蛙男商会さん映画化関連で自主(個人)制作の話題が出てたので追記しときます。そういや新海誠さんとかもいたな・・。

FROGMAN氏 個人製作のフラッシュアニメが映画化
http://slashdot.jp/article.pl?sid=07/02/21/126258

Posted by m_um_u at 2007年02月22日 06:00
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Excerpt: ウェブ動画の台頭に関連して、テレビ番組や映画などの本格的メディアコンテンツ(「Head」)でもなく、ティーンエージャーが音楽に合わせて口パクしているしょーもないホームビデオ(「Long Tail」)..
Weblog: Tech Mom from Silicon Valley
Tracked: 2007-02-21 13:45
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