2010年09月06日

「バクマン。」 → ジャンプシステムとマンガの面白さ → 「One Piece」の話

「バクマン」8巻までよんでなんかちょこちょこ思ったのでメモ程度に


バクマン。 2 (ジャンプ・コミックス)
小畑 健
集英社
おすすめ度の平均: 4.5
4 博打漫画、略して「バクマン」
3 1冊読むのに時間がかかる、そこがいい
4 精巧なリアリティと縦横無尽なフィクションが同居する
1 気持ち悪いマンガの最高峰
5 力になった




感じとしては「まんが道」+「G戦場ヘヴンズドア」+「さるまん」+ちょっとラブコメって感じのマンガ道話。それにジャンプシステム的なものをフィーチャリングしたもの


いままでのマンガ道話だと作家と作品の格闘、才能が「生活のためにけづられたり」することの悲哀のようなものを中心に描いていたように思うんだけどこの作品ではそれを特に感じさせない作りになっている。


その辺が現代っぽいのかなあと思いつつ、その分ジャンプシステムに関するネームがぎっちりだったり、「編集は作家と対立することもあるけどその止揚を通じて作品が出来上がっていくんだ」ってところが描けていたように思う。

特に作品を同時並行で2つも3つも作ったり、ネームをアンケートシステムに合わせて変更していくところなんかは「プロとしての作品は自分の創りたいものだけをつくっていては通じない」ってメッセージを強く感じさせた。

それを特に悲哀をもってではなく、「当然のこと」として描く。


それを受けてジャンプで長期連載している作家たちの凄みが分かってくる。


てか、この作品全体が「ジャンプ」に付加価値をつけるものなのだなぁ、と。特に「広告」というわけでもなく透明性+アカウンタビリティって感じで。

ジャンプって最近なんか問題あったか?とか思うんだけど、本作の中でもよくでてくる「テコ入れ」をジャンプ自体に行ってるマンガと言えるのかもしれない。



自分的な反省として


「One Piece」なんかは人気連載先伸ばしのために強さのインフレ問題にはまってるような印象だった。



ONE PIECE (ワンピース) - 関心空間
http://www.kanshin.com/keyword/408086



「強さのインフレ問題」というのは

ジャンプみたいな少年漫画の場合バトルマンガ的なものが求められる → 人気とりのためにバトルシーン+トーナメント(あるいは段階的集団戦闘)方式多用 → 「敵たおす → 敵ボスはいまの力では倒せない → 修行 → 敵ボス倒す → 新たな敵とのたたかい → 敵たおす →(繰り返し)」

的な循環構造。敵の外装パターンや小手先の技は変わるけどやってることは同じようなの。


そんで、いつの間にか主人公がやたら強くなって地球とか破壊できるようになったり…。


そういう形でジャンプによって地球がいくつも破壊されていくわけだけどストーリーやテーマ的にはなにも残らない(ひねりがない)マンガが出来上がっていく。


それで強さを単なる量的パワーゲームにするのではなく、質的なもの(三すくみとか、「ある条件においてはあるものが勝てる」みたいなの)にすることによって単なる肉弾戦闘から頭脳戦へ持ち込む工夫がなされたりした。



『ユリイカ』2008年6月号「特集:マンガ批評の新展開」 - インタラクティヴ読書ノート別館の別館
http://d.hatena.ne.jp/shinichiroinaba/20080626/p1

 『少年ジャンプ』における「強さのインフレのマニエリスム」はかなり古い起源をもつものだが、誰も目にもはっきりそれとして確立したのは車田正美『リングにかけろ』であるし、広く認識されたのは鳥山明『ドラゴンボール』ということになろうが、このパターンは実はある時期以降、ジャンプにおいて――そして少年まんが一般においても、必ずしも(少なくとも唯一の)主流ではなくなっている。はっきりとそれが打ち出されたのは、わかりやすいところで荒木飛呂彦『ジョジョの奇妙な冒険』第23部以降、すなわち極めて限定された超能力としての「スタンド」の出現以降であり、あるいはまた冨樫義博『幽☆遊☆白書』の「仙水編」以降である。このあたりから、「制約の中での頭脳戦」を基調とする作品が急速に増え、広く受け入れられるようになっている。おそらくは福本伸行のメジャー化も、この潮流のなかに位置づけることができるだろう。

 ただしこうした展開が、藤本が「力のインフレ」という言葉で問題としようとしているある種の病理(?)への十分な対抗力となりえているかどうかは、確かに疑わしい。たとえば頭脳戦を前面に出した冨樫の『HUNTER×HUNTER』が、にもかかわらず、ことに「キメラアント」編以降「力のインフレ」にあっさりはまってしまって迷走していることは印象的である。



この辺の話がたけくまメモの「マンガのおもしろさ」話につながっていたのかな


伊藤剛『テヅカ・イズ・デッド』を読む(1): たけくまメモ
http://takekuma.cocolog-nifty.com/blog/2005/09/post_8459.html

伊藤剛『テヅカ・イズ・デッド』を読む(3): たけくまメモ
http://takekuma.cocolog-nifty.com/blog/2005/10/post_788b.html


テヅカ・イズ・デッド ひらかれたマンガ表現論へ
伊藤 剛
NTT出版
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おすすめ度の平均: 3.5
3 マンガを素材にポストモダンを論ず
3 タイトル倒れ以前に本として趣旨不明
4 “テヅカ”死後の世界に向けて
5 「切断」ではなく「連続性」の書
5 このマンガ理論の提示を、なかったことにしてはならない




オトナは「マンガはおもしろくなくなった」みたいなこということあるけどほんとにマンガはおもしろくなくなったのか?それは単にオトナが現代のマンガの表現技術へのリテラシーを身につけてないだけなのではないか? あるいは、「どこを見所とするか?」のズレ


リテラシーの話は映画とかテレビにも共通するモンタージュ技法的なアレが紹介されてた。まあ、たまに異性のマンガ読むとコマ割りとか違ってて読みづらいってことあるけどああいうの。あれが「世代間である」って話。


それとは別に「現代のマンガでは見所とされてるところ、おもしろいとされるところが違うのではないか?」って話。

ここで「ストーリー重視からキャラクター重視へ(キャラ萌え)」という嗜好の変移について紹介されていた。

この辺のキャラ消費の話はデータベース消費の話とかぶるなぁというとこ


動物化するポストモダン オタクから見た日本社会 (講談社現代新書)
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1 語るだけ無駄
3 90年代オタクの楽しみ方はわかった
1 動物化するポストモダンとはどういう意味だろう
5 作者の原点
3 趣味のオタクを本業の哲学に生かしたポストモダン入門書、日本編?





そんな感じでストーリーとかパワーゲームとかも通り越してキャラクターのかわいさとか背景設定、「キャラクター以前に好きなパーツ(ネコミミ、メイド服など)がありその組み合わせとしてキャラクターが構成されていれば十分」みたいな楽しまれ方をされている現状がある。


翻って「One Piece」の場合この辺どうか?


パワーゲームの傾向はあったけどそれはバトル系週刊連載なら仕方ないかなとか思う。いちお「作品中の特殊能力は相性があるよ」ってことで強さの質的限定が行われていたんだけど、それでもパワーゲームにはなった。


しかしあれだけ長期連載でギミックにいろんなアイデア出して、設定資料も凝ってたら仕方ないかなぁ。。最近のインフレはネタ切れってことだったのだろうし。


それでも異例の長期契約してるからやめるわけにもいかんし、なにより屋台骨だし…。



そういう周囲からのプレッシャーが作家自体の描きたいものをじっくりと描く時間を奪っていっていたのではないか? たとえば、作家当人もいっていたように「One Piece」の場合は任侠的仁義とか友愛みたいなのが描きたいシーンということになっている。

そこからテーマが展開していくとすれば、警察機構も含めた多元的正義と主人公の任侠的な「義」の精神の止揚の問題を描いていくことになるだろうけど、それを表現する前に「人気」が要求されギミック的な小技を出す必要が出てくる。


「それでも作者が満足ならいいじゃん。任侠的なもの描きたいだけだったんだし」って見解もあるだろうけど



そんなことを思っていたんだけど、今回「バクマン」を読んでちょっと考えが変わった。



「作品全体を通してストーリー」ってのもあるけど、ジャンプのような、週刊連載 → アンケートで即結果 → それを次に反映させなければならない、って構造がある場合、ワンピにおける一つ一つのシーズンがひとつのストーリーでありテーマだったのかなぁ、と。

コミックス数にするとワンシーズン5巻ぐらいだろうか

その一つ一つがひとつのテーマであり、独立したマンガ作品として完結してるような感慨が作者からするとあるのかもしれない、とか思った。



それはそれで十分だし、そこからテーマや作品のメッセージのようなものを表せるとしたら、それはもうキセキなのだろう





ONE PIECE 1 (ジャンプ・コミックス)
尾田 栄一郎
集英社
おすすめ度の平均: 4.0
2 日本一売れるのは納得できません
1 ストーリーは悪くないけど・・・・
5 歴史的第1作
5 すべて此処から…
4 面白いです!





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関連:

G戦場経由、蒼い月行き (赤い戦車風味): muse-A-muse 2nd
http://muse-a-muse.seesaa.net/article/36439208.html




タグ:マンガ
posted by m_um_u at 23:34 | Comment(0) | TrackBack(0) | レビューこのエントリーを含むはてなブックマーク
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