2009年11月24日

Rebecca Horn    性と生の超越


Now my hair is a glorious black, black as the raven's wing

(ANNE OF GREEN GABLES) Lucy Maud Montgomery







居明かして 君をば待たむ ぬばたまの  我が黒髪に霜は降るとも
            
                            (磐姫皇后








としとしに  わが悲しみは深くして   いよよ華やぐ いのちなりけり
                       
                       (岡本かの子、「老妓抄」











東京現代美術館でやってるレベッカ・ホルン展にいってきて


「レベッカ・ホルン展−静かな叛乱 鴉と鯨の対話」 東京都現代美術館
http://www.mot-art-museum.jp/exhibition/107/


東京のアート情報を発信 立川直樹責任編集"TOKYO ART PATROL"〜東京アートパトロール〜 : 静けさに潜む暴力性 知的で優雅な官能。何度も通う価値のある「レベッカ・ホルン展」
http://blog.excite.co.jp/tap/12299550/




思ったよりよかったしなんかいろいろ思うところあったので感想日記。

概要とか略歴はいまあげたリンク先を見てもらうとして、以下は自分的に思ったことの羅列的に


この人の作品とかどういった人かということはぜんぜん知らなかったんだけど、なんとなくそろそろ現代美術見に行きたかったし紹介写真にあった鴉の羽の作品がよさげだったので観覧することに決めた。


そんで、外枠的テーマはマーティン・クリードと共通する


muse-A-muse 2nd: 意味以前へ  Martin Creed展にいってきたよ (reprise)
http://muse-a-muse.seesaa.net/article/122569128.html



社会的に作られた意味の相対化・解体という感じ。ただ、先取りして言うと、それに終始することなく解体と相対化からさらに一歩進んでるように思った。彼女なりに「世界」と向き合うためのコードを伴って。

そのキーコードが「鴉」。

ここでのコードは攻殻機動隊なんかで見られるプログラム突入の際に使われる特定コードをイメージしてもらうといい。



私見ではコード「鴉」は日常の時間を超越した「闇」の象徴であり、また彼女が相対化しようとした「女性性」もまとっている。女性性というほど具体的なものではないのかもだけど、ほかの記号とは違ったみずみずしさというかウェットさをもっている。

それはすぐに「性」にむすびつくわけではないだろうけど、「貝」みたいな感じであからさまに表現された生物的「性」や、女性性をまとった女性にヒゲをまとわらせて遊ぶことによって社会的女性性を挑発している作品で表現されたようなものとは違った形での「性」との向き合い方だと思った。


社会的「性」でもなく生物的「性」でもない、自分の中に自然と埋め込まれている「性」の許容。



それが鴉のぬばたまの羽



(ここでいう「性」は「生」のアンテナのようなもの。その意味では竹田せいじさんなんかがいう「エロス」的なものにも近いけどそれほど大きな指向性をもったものではなく、もうちょっと微細でおぼろげで生活の感覚的なもの)



そして、

そういう形で自らの中の女性性を許容、あるいは向き合うことで利用することを選んだ彼女が最後にみせたものが靴の中への託卵的なものだったのはなんか象徴的だった。

彼女にとって「靴」のコードが何を表すのかまだちょっと定かではないんだけど、社会性というか社会の規則かなぁ

あるいは、往々にしてその規則に従い家計を支えるのは男性であることが多い、ということから「そういったものに自らの卵を預ける」ことを是しとして選択した、ということなのかなぁ、と。


彼女の場合は一般的な大部分の女性と違ってひとりで食ってけるから社会制度の象徴ということかもだけど。「靴」という小さなものとして表現したのは自分が住んでいる行政区域や、映画作りの際の制度みたいなものかなぁ



早足だったけど全体の概略というか物語としてはそんな感じだったように思う。それは「大人の選択」のように思った


Martin Creedのときには「構築されたものはすべて相対化する」あるいは「宇宙人の目から見るとそれは不思議なだけ」という感じで作品が展開されていて、最後まで社会や言葉の解体に終始してたんだけどなんとなくRebecca Hornの場合はその先を表現していたようだった。それは「一般的にこうすべきだ!」的な大上段に構えたものではなく彼女なりの世界との向き合い方




さて、早足過ぎたのでもうちょっと詳細に個々の作品というか流れ的なものについて語っていこう。


展示会場に入ってすぐにはローテクなオートマトンによる小作品群がある。

「相互破壊の場」(全自動なピストルがお互いに狙いあっていてその後ろには無限に続く鏡がある)や「ジェイムズ・ジョイスのためのヌーグル・ドーム」、「ピーコック・ペンシル・モーニング」、「バタフライ・ムーン」など

あとから思ったけどこれらは大きな機械だと社会的「システム」チックになるのでだめで、ローテクな小さな機械であるからこそ良かったのだなぁ。

オートマトンは時間性を超越した永久機関のようなところがあるし、小さな機械たちには自らが生み出した子供たちのような愛着がわく。フランスの自動人形のような。そしてスチームパンク的なローテクへの滋味と愛着。

そういった子供たちが不器用ながらも「わたし」が対峙している問題や美しいと感じる瞬間を表現し、時を刻んでいく。

魔女が生み出した子供たち


貝殻の間では「性」の生物的機能が対象化され、大きな泉では時間が超越される

「ペソアのためのハート・シャドウシネマ・ヴェリテ」と「鯨の腑の光」では時間の描き方がちょっと違う、というか前者が流れる時間を表現していたのに対して後者は時間が止まった空間を表現していたように思ったけど。そしてその空間では言語(-社会)も超越される。


あとでキュレーターの人の解説本っぽいのみたら「鯨の腑の光」というのは旧約聖書のヨナ記なのだそうな


「大魚の腹の中にいたヨナ」 代々木上原教会:礼拝説教
http://www.yoyoue.jpn.org/worship/getPreach.htm#05_02_20



われらは鯨の腑というヨナの空間を通じて時間(世界と存在)や社会を解体し、社会に帰るイニシエーション(しるし)を得る。


「鴉の木」は漆黒の時間を黄金の軌跡で迎える



屋根の先端で
目を閉じたまま深遠をまさぐる
私の下、木々の中で鳴く鴉たち


昇る太陽の光線が
私の身体を貫く


音もなく鴉たちは木々より飛び立ち
太陽の金の光の周りを回り
朝日の町を曇らせる


空の青に刻まれた
束の間の黒い黴のめまい







夜の闇は束の間われらを日常の時間と生活から解放してくれる。

漆黒の中に永遠につづくかのような落ち着いた時間がある。


朝陽はそんな夜のとばりを溶かしていくけど、カラスは朝陽の中で溶けつつ飛び立つ

そのあとには黒と金の軌道が残される



それはまるで生命の螺旋のような軌跡

あるいは攻殻機動隊2で見せられたヤタガラスの導き(ヤタガラスは時間と生命の有限を超越した旅にわれらを誘う)




壁一面にちりばめられた鴉(黒)の徴

それは黴のようにわれらの社会を侵食していく


黒に染まることで、われらの生き得る場が広がっていく



音楽は時間芸術

ピアノや楽譜を破壊することで社会的時間を破壊・超越していく






各作品についてのアウトライン的にはだいたいこんな感じのことを思った。



映像作品のほうは(社会的意味が解体された後に相対化された)コミュニケーション/ディスコミュニケーションについて描かれていたようだけど、これは要約とかではなく作品ずーっとながしっぱということで遠慮させていただいた。各作品1時間半ぐらいあるし。。




あとは自分的に頭に浮かんだ作品リンク


鯨の腑の光ということではやはり「海獣の子供」が思い浮かんだ


海獣の子供 4 (IKKI COMIX)
五十嵐大介
小学館
おすすめ度の平均: 4.5
5 神秘と恐怖
5 感覚が広がります
5 海と宇宙が奏でる交響楽の調べに魅せられます
5 いままでこんな面白い漫画を知らなかったなんて!
3 つまらないからじゃないんです



おそらく海くんたちも鯨の腹の中で時間と(有限な)存在を超えていくのだろう。


そして本当の意味で自然とつながる


魔女 1 (IKKI COMICS)
魔女 1 (IKKI COMICS)
posted with amazlet at 09.11.24
五十嵐大介
小学館
おすすめ度の平均: 4.0
4 芸術的な作家
5 虜になりました
3 なんだか騙されたような。
1 あーあ
5 マンガの枠を超える作品


魔女 2 (IKKI COMICS)
魔女 2 (IKKI COMICS)
posted with amazlet at 09.11.24
五十嵐大介
小学館
おすすめ度の平均: 5.0
5 魔女とは何か
4 購入前の注意…か?
5 気がつけば涙を流していた「PETRA GENITALIX」の話に、星七つ
5 見るものとの体験を共有する
5 1より更にパワーアップした作者の世界



スピリチュアルとかそういうのではなく自分の中にある自然でもいいんだけど


託卵や社会化ということでは「鵺の砦」を思った


鵺の砦 (BEAM COMIX)
鵺の砦 (BEAM COMIX)
posted with amazlet at 09.11.24
福島 聡
エンターブレイン
おすすめ度の平均: 2.0
2 中間



サイレントなショートショートなので初見だとわけわかんないけど。女性が「卵を産む動物」という選択をし家庭にはいっていくことなんかが表されている。


あとは先ほどいったこれとか


攻殻機動隊 (2)    KCデラックス
士郎 正宗
講談社
おすすめ度の平均: 3.5
5 難しく考える為の本
3 前作「攻殻機動隊(1)」の続編
3 楽しめる部分と全くそうでない部分の2面性
2 難解と言うより・・・難読というような。
1 難解





だいたいそんな感じ


「魔女」ということについていえばRebeccaはもはや魔女のような精神性を持ってるだろうな、とか思った。

それはもはや精神的な意味では老いることのない永遠にたどり着いたということだろうけど、


「いよよ華やぐ いのちなりけり」、か




タグ:art
posted by m_um_u at 22:22 | Comment(0) | TrackBack(1) | 日記このエントリーを含むはてなブックマーク
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]


この記事へのトラックバック

永遠に女性的なる現代美術
Excerpt: 永遠に女性的なる現代美術
Weblog: ロドリゲスインテリーン
Tracked: 2009-12-01 22:20
×

この広告は180日以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。